「眺望的ナル気配」レポート#1:「模型」のスライドショーから見えてくる祝祭

日時:2020.11.6


「模型」のスライドショーから見えてくる祝祭

“模型”が架空の都市を立ち上げる

10月16日、チーム中村企画「眺望的ナル気配」では、6つの景色の撮影が行われました。「眺望的ナル気配」とは、祝祭や原風景の記憶からなる「模型」が架空の都市を立ち上げるという企画。その架空の都市をコンテにおこし、模型を製作、一枚一枚コマ撮りの要領で撮影をしてゆきます。

この企画は、全部で6つのスライドショーと1つの動画で架空の都市を表現します。この日はちょうど3番目のスライドショーの撮影が行われていました。

ひたすら調整からなるスライドショー

今回つくろうとしている3番目のスライドのテーマは池袋本町の藤工芸の職人さんをモチーフに扱った作品。その方は豊島区伝統工芸士としても有名で、現在も銭湯の籠など現役で製作しているそう。

中村さんは昨年のF/Tで製作を進めるなかでその方と知り合ったものの、昨年の企画では取り扱うことができなかったため、今年の「まぼろし編」でぜひ取り扱おうという展開に。そんなリベンジ企画でもあるのだそう。

架空の商店街のイラストをよく見ると2本の通りが描かれており、藤工芸の職人さんのアトリエも池袋中央通り商店街もその中にあります。

 

さて、撮影の展開はというと、作品のための模型パーツのデータデザインと作成を行ない、レーザーカッターで切り出した紙やプラスチックの素材を並べてこまかな配置の調整を行い、照明をセット。セッティングが済んだらシャッターを切り、画像を確認、そしてさらに見え方を調整しシャッターを切る……なかなか骨の折れる作業です。

日常こそ祝祭の場

3番目の撮影が終わり、次に行われたのは6番目のシーンの撮影。6番目のシーンは奥に富士塚のある池袋氷川神社の前に参道や商店が広がり、人々が通りに繰り出していくことをイメージしたもの。ここには、晴れ褻(ハレとケ)という言葉を引用して、イベントとしての特別な日(晴れ)に注目するよりも、連続した日常(褻)こそ祝祭の場なのではないかという中村さんのメッセージが込められています。

ちなみに池袋氷川神社の富士塚は江戸時代後期頃に各地に築造されており、富士山信仰に由来するもの。さまざまな理由から富士登山が出来ない人たちも、富士塚に登れば富士山に登ったのと同じ霊験が得られるのだそう。

ここで扱われている富士塚は実在のものですが、現代の感覚からすると架空の景色のようにも思えます。未来に向けて連綿と続くこの「通りの日常」にとっての祝祭イメージとしても、富士塚は象徴的なオブジェなのかもしれません。

テキスト・写真:泉山朗土