カーブのその先は。6 天祖神社

旅人:杉山至

寄り添う銀杏の間で

  • 谷端川と三神社の妄想鳥瞰スケッチ 天祖神社・大銀杏

    ※画像をクリック/タップして横に送ると、6-2『谷端川と三神社の妄想鳥瞰スケッチ』が見られます

旅人より

道が曲がるには訳がある。
地形がそこで変化しているか、
神聖なものや不可侵な何かがあり真っ直ぐ進めない理由がある。

また古い道は必ずといって良いほど緩やかにカーブしている。
けもの道のように身体を自然に運べる歩きやすい流れがそこにはある。

豊島区は谷端川の川端に沿って発展してきた。椎名町の長崎神社、大塚の天祖神社、池袋本町の氷川神社等を軸に街が広がる。点在する古い神社の山の端をなぞるように谷端川はカーブを描く。わずかな地形の変化と方位を読み解き古人はそこを神聖な場所としたのだろう。

豊島区を旅する中で今は暗渠の谷端川を可視化したいと思いカーブに注目した。
豊島を育んできた谷端川のまぼろしの景が少しでも立ち上がればと思います。

6-1『天祖神社 大銀杏』
銀杏は東京都の樹。そういえば、品川の小さな神社の境内にも大銀杏があった。 御一新、戦争、震災、災害、発展、復興。 大塚天祖神社の大銀杏が見てきた大塚の街の変遷に思いを馳せる。

6-2『谷端川と三神社の妄想鳥瞰スケッチ』
天祖神社・大銀杏のウロが語る。
その先には、地下のくにがあるという。
空から降ってきた雨が土に染み込み、その水は地下水となり静かに音を立てて流れていく。
地形をなぞり、深く深く。その川は夫婦銀杏のように表層の谷端川と対になり併走して流れているそうだ。

大塚・天祖神社、池袋本町・氷川神社、椎名町・長崎神社。
この三神社が谷端川と深く関わっているのがよくわかる。
神社はいずれもこんもりした丘にあり、その周りを谷端川が大きなカーブを描いて取り巻く。
そして神社の脇を川沿いの道か雑司ヶ谷道、小石川道、長橋道、清戸道といった古道が走る。
今回の小さな旅でカーブの先にふと顔を出したのは、サンシャイン60と清掃工場の白い巨大な排気塔、 そして要町高速道路脇に一つポツンと屹立している黒いタワマンだった。

 

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旅人プロフィール

Photo:Ryosuke Kikuchi

杉山至 すぎやま・いたる

舞台美術家。国際基督教大学在学中より劇団青年団に参加。2001年度文化庁芸術家在外研修員としてイタリアに滞在。演劇、ダンス、ミュージカル、オペラまで、ジャンルを問わず幅広く活躍。舞台美術ワークショップや劇場のリノベーションも手がけている。カイロ国際演劇祭ベストセノグラフィーアワード2006、読売演劇大賞最優秀スタッフ賞(14)受賞。