旅人より 山手線脇の路地を入ったら、どこかの家からピアノの音が聞こえてきた。 こどもが弾いているような、切れ切れのメロディだけをたぐっていく。 ふと気づくと、ほんのわずかだけ空いた窓から、ピアノを弾く手が見えた。ほんの一瞬、1秒だけ窓を覗いてみたら、音の主は、初老の女性だった。 ほんの数センチ空いた窓から見えたその人は、顔も表情も分からない。 音もその人の姿も、白昼夢のようだった。
山手線脇の路地を入ったら、どこかの家からピアノの音が聞こえてきた。
こどもが弾いているような、切れ切れのメロディだけをたぐっていく。
ふと気づくと、ほんのわずかだけ空いた窓から、ピアノを弾く手が見えた。ほんの一瞬、1秒だけ窓を覗いてみたら、音の主は、初老の女性だった。
ほんの数センチ空いた窓から見えたその人は、顔も表情も分からない。
音もその人の姿も、白昼夢のようだった。