カーブのその先は。 7 雑司ヶ谷道

旅人:杉山至

ワクワクするカーブのある尾根道

  • 谷端川と三神社の妄想鳥瞰スケッチ 妄想スケッチ 雑司ヶ谷道・池袋本町から池袋へ

    ※画像をクリック/タップして横に送ると、7-2『谷端川と三神社の妄想鳥瞰スケッチ』が見られます

旅人より

道が曲がるには訳がある。
地形がそこで変化しているか、
神聖なものや不可侵な何かがあり真っ直ぐ進めない理由がある。

また古い道は必ずといって良いほど緩やかにカーブしている。
けもの道のように身体を自然に運べる歩きやすい流れがそこにはある。

豊島区は谷端川の川端に沿って発展してきた。椎名町の長崎神社、大塚の天祖神社、池袋本町の氷川神社等を軸に街が広がる。点在する古い神社の山の端をなぞるように谷端川はカーブを描く。わずかな地形の変化と方位を読み解き古人はそこを神聖な場所としたのだろう。

豊島区を旅する中で今は暗渠の谷端川を可視化したいと思いカーブに注目した。
豊島を育んできた谷端川のまぼろしの景が少しでも立ち上がればと思います。

7-1『雑司ヶ谷道 池袋本町から池袋へ』
尾根道がどうも好きだ。カーブも好きだが、尾根道を歩くときのエアーポケットに入ったような感覚が好きだ。 尾根を背骨のように軸として、谷や川に降りる道が枝分かれしていく。古くからの道、雑司ヶ谷道と小石川道がこの氷川神社の小高い山の先で分岐する。今は遠くにゴミ処理場の巨大なタワーが見える。

7-2『谷端川と三神社の妄想鳥瞰スケッチ』
宮本常一の「忘れられた日本人」の中に、山道を歩きながら歌を歌う馬喰の話しが出てくる。 なぜ歌うかというと、歌っていれば、近くを歩いている人はその歌声で、あの村の誰々だろうとわかるし、 やまびこのようにその歌に誰かが応答してくれれば、近くを歩いているなとわかり安心もするという。 熊除けや盗賊除けとしても機能したのかもしれない。 煎餅屋、荒物屋、団子屋さんとあるこの追分の尾根を越えてくるときそんな事を思い出した。

大塚・天祖神社、池袋本町・氷川神社、椎名町・長崎神社。 この三神社が谷端川と深く関わっているのがよくわかる。 神社はいずれもこんもりした丘にあり、その周りを谷端川が大きなカーブを描いて取り巻く。 そして神社の脇を川沿いの道か雑司ヶ谷道、小石川道、長橋道、清戸道といった古道が走る。 今回の小さな旅でカーブの先にふと顔を出したのは、サンシャイン60と清掃工場の白い巨大な排気塔、 そして要町高速道路脇に一つポツンと屹立している黒いタワマンだった。

 

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旅人プロフィール

Photo:Ryosuke Kikuchi

杉山至 すぎやま・いたる

舞台美術家。国際基督教大学在学中より劇団青年団に参加。2001年度文化庁芸術家在外研修員としてイタリアに滞在。演劇、ダンス、ミュージカル、オペラまで、ジャンルを問わず幅広く活躍。舞台美術ワークショップや劇場のリノベーションも手がけている。カイロ国際演劇祭ベストセノグラフィーアワード2006、読売演劇大賞最優秀スタッフ賞(14)受賞。